すぐに両国の両親と僕の実家に、そして学校に出かけている沙羅と葉奈を引き取ってもらうためにご近所の佐々木さんに、弟廣次の仕事場に、敬子の、僕の友人たちに。思いつくままに電話をかけ、彼女が最期を迎えたことを知らせました。中村先生が来てくれて、「奥様はとても残念なことでした。正式な時刻は午前11時35分でした。早速ですが、頭の膨れている部分を元のように戻してあげたいと思います。それからお顔などもきれいにしてあげたいのですが、よろしいですか。」と言ってくれました。「ありがとうございます。よろしくお願いします。」
先生方が最後の身支度をしてくれている間、外を見ながらみんなが来るのを待ちました。空は晴れ、陽射しが眩しいほどの良い天気でした。ただ、風が強いらしく、雲がとても速く動いて行きました。これまでの彼女の闘いの日々が浮かんで来ました。長かったのだろうか、短かったのだろうか。良く解りませんでした。ただその最期がまりに突然で呆気なかったことに戸惑っていました。何も言えなかったけれど、彼女が息を引き取ったその刻、「敬子。ママ。ありがとう。」と声をかけました。やはりそれが一番に言いたかったことなのでした。ご近所の藤波さん、佐々木さんたちに連れられて沙羅、葉奈が着きました。「ママね、一生懸命頑張ってくれたんだけどな。天国に行ってしまった。沙羅、葉奈、ダダは何もしてやれなかった。ごめんな。でもママは本当に頑張ったぞ。だからありがとうって言ってあげような。」葉奈は涙ぐみ、沙羅は泣きたいのを我慢しているようでしたが、「うん。」と言ってくれました。ほどなく彼女のお父さん、お母さん、僕の弟廣次も集まりました。病室に入りました。膨瘤から髄液や血腫を抜き取る処置を行なったために、彼女の頭には包帯が巻かれていました。もしその刻が来たら着せてあげようとお母さんが用意してくれていたピンク色のきれいな浴衣に着替えてあり、顔もきれいにお化粧が施してありました。身体に繋がれていた色々な管も全てはずされ、とても穏やかな顔をしているように見えました。そして病室はとても静かでした。
みんなで順番に彼女に話しかけました。「敬子!・・・・・・・。」「敬子、頑張ったね。やっとお家に帰れるね。良かったね。」「ママ、ありがとう。」「ママ、ありがとう。」「・・・・・・・・。」
「色々手を尽くしていただいて本当にありがとうございました。」傍にいてくれた先生や看護婦さんにお礼を言いました。
中村先生も涙を流しました。家に戻ってお母さんから聞かされて、それを知りました。
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